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加能 作次郎/耕 治人

雪の夜、「昔あったとい」と昔話をしてくれたあの人。実子ではない「私」をいつも温かく抱きしめてくれた亡き母の思い出(加能作次郎『母』)。親戚の娘をいきなり預けられた貧しい夫婦。強引なやり方に反発しながらも、いつしかその娘が愛しくなっていく(耕治人『東北の女』)。ハガキ一枚を頼りに上京してきた娘「初」は押しかけた家で雇ってもらうが、その家の男の子はひどく意地悪で…。孤独な少年を守ろうとする娘の潔い愛が胸を打つ、由起しげ子の『女中ッ子』。雪のように清らかで、温かい物語。

加能 作次郎/耕 治人

耕 治人(こう はると、1906年8月1日 - 1988年1月6日)は、日本の小説家・詩人。本名の姓は、「たがやす」と読む。 熊本県八代市生まれ。明治学院英文科卒。千家元麿に師事して詩作を始め、1930年(昭和5年)『耕治人詩集』を上梓する。 戦前の1937年(昭和12年)から川端康成を頼り、1939年(昭和14年)7月には、『文學界』に初めての小説を載せてもらうなど世話になっていた。 戦中の1945年(昭和20年)3月に、左翼思想犯として逮捕される。 戦後、主として私小説を書き始め、長く不遇だったが、1970年(昭和45年)に『一条の光』で読売文学賞、1972年 (昭和47年に『この世に招かれてきた客』で平林たい子文学賞受賞。