cover

壺の中にはなにもない

戌井 昭人

勝田繁太郎(26歳)は、働く意欲がなく、これといった趣味もなく、恋愛経験もゼロで、ただただ平穏にのんびり過ごす日常を愛する男。人に気を遣うことができず、仕事でミスをくり返してもまったく気にしないマスペースさゆえ、彼の周囲では珍事が尽きず、周囲からは疎まれている。だが、高名な陶芸家として知られる祖父だけは繁太郎の人間性に好感を持ち、彼の陶芸の才能を見出していた。陶芸への興味を引き出し、あとを継がせようと画策する祖父の思惑は果たされるのか。そして、繁太郎が成長する日は訪れるのだろうかー。破天荒な祖父との交流と、26歳にして訪れる初恋。笑って、笑って、少ししんみりして、心温まる。世のおかしみと愛すべき人々を、疾走感あふれる筆致でユーモラスに描く至極の長編大衆小説。

戌井 昭人

戌井 昭人(いぬい あきと、1971年10月22日 - )は、日本の俳優、劇作家、小説家。祖父は文学座代表を務めた演出家の戌井市郎。 == 来歴 == 東京都調布市出身。1995年、玉川大学文学部演劇専攻卒業。同年、文学座付属研究所に入所。翌年に文学座研究生に昇進し12月に退所。1997年に牛嶋みさをらとともにパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げし、脚本も担当している。 2008年に「新潮」に発表した『鮒のためいき』で小説家デビュー。