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深沢 七郎/島尾 ミホ

二人の子どもを育てあげた「おくま」は、身体が辛くても鶏の飼育や孫のお守りなど働くことをやめない。庶民の母の見事な最期(深沢七郎『おくま嘘歌』)。先祖の骨を川で洗い浄めた夜、島人たちは生死をこえた安らぎのなかに舞う(島尾ミホ『洗骨』)。幼い日、どこへでもついてきた弟は「私」の唯一の理解者だった。世間になじめず漂泊する兄と、勤め人として生きる弟の心の絆を描いた、色川武大『連笑』。そばにいるからこそ伝えられない肉親の情に、じわりと胸が熱くなる三篇。
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深沢 七郎/島尾 ミホ

深沢 七郎(ふかざわ しちろう、1914年〈大正3年〉1月29日 - 1987年〈昭和62年〉8月18日) は、日本の小説家、ギタリスト。山梨県生まれ。日川中学卒。職を転々とし、ギター奏者として日劇ミュージックホールに出演。『楢山節考』が正宗白鳥に激賞され、異色の新人として注目を集め、土俗的な庶民のエネルギーを描いて独自の地位を得た。しかし、「中央公論」に発表した『風流夢譚』が右翼テロ事件(嶋中事件)を引き起こし、一時筆を折った。その後も農場や今川焼屋を経営したり、ギター・リサイタルを開催したりと多くの話題を残した。他に代表作『笛吹川』『庶民烈伝』『みちのくの人形たち』など。