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抱擁

日野 啓三

大都会・東京の真ん中で静かに佇む洋館に心惹かれた「私」は、得体の知れない不動産屋に誘われるままにその館を訪ねる。そこには幻想的な少女・霧子や近寄りがたい老主が住んでいた。身を固く包んで口さえ開こうとしない霧子に、私の興味は膨らんでいく。主である霧子の祖父の依頼で、彼女の家庭教師として洋館に同居することになる私ー。そしてこの一家の住人たちは数奇な運命に翻弄され始めるのだった。「ある夕陽」で芥川賞を受賞した日野啓三が幻想的作風で新境地を開き、泉鏡花賞に輝いたロマネスク小説の傑作。

日野 啓三

日野 啓三(ひの けいぞう、1929年6月14日 - 2002年10月14日)は、日本の小説家、文芸評論家。ベトナム戦争を題材にした作品や、現代都市における幻想を描く都市小説といわれる作品などで知られる。 == 経歴 == 東京生まれ。5歳の時に父親の仕事のため朝鮮に移り、小中学校時代を慶尚南道密陽で暮らした。1942年にソウルに移って、龍山中学に通う。敗戦後は父親の故郷広島県福山市に引き揚げ、広島県立府中中学校(現広島県立府中高等学校)を経て、1946年に旧制一高入学、この頃野間宏、椎名麟三などの戦後文学に関心を持ち、大岡信、丸山一郎(佐野洋)らと同人誌『二十代』、次いで同じメンバーで『現代文学』を作り、文芸評論を執筆した。 1952年、東京大学文学部社会学科卒業し、読売新聞外報部に勤務。この年に『文学界』の新人批評家特集で「荒正人論-虚点という地点について」寄稿、同誌の会合で安岡章太郎、吉行淳之介、奥野健男ら同世代の作家や批評家と交流する。
誕生1929年6月14日 日本・東京府豊多摩郡(現・東京都渋谷区)
死没(2002-10-14) 2002年10月14日(73歳没) 日本・東京
職業小説家
言語日本語
国籍日本
教育学士(文学)
最終学歴東京大学文学部社会学科卒業
活動期間1966年 - 2002年
ジャンル小説・評論
文学活動内向の世代
代表作『あの夕陽』(1975年)『夢の島』(1985年)『砂丘が動くように』(
主な受賞歴平林たい子文学賞(1974年)芥川龍之介賞(1975年)泉鏡花文学賞(1
デビュー作『還れぬ旅』(1971年)
配偶者あり
子供日野鋭之介(長男)