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大衆文学復刻版

尾崎秀樹

「大菩薩峠」「国定忠次」「鞍馬天狗」などのチャンバラものに代表される大衆文学は、大衆に迎合する通俗文学と批判されながらも、そこで活躍する主人公達のイメージは我々の心に今も強烈に生きている。この不思議な魅力はどこから来るのか。大衆文学は1920年代に成立したといわれるが、著者はこの成立史をさらに遡って江戸時代の講談、落語などの大衆文化の中にまで踏みこみ、「大衆とは何か」「大衆の望む面白さとは何か」の問いを軸に、日本人の精神構造にふれるなにかをつかもうとする。さらに、民族的思考の一表現としての大衆文学にも思索をめぐらせる。理論は不要とみなされてきた大衆文学の領域に初めて分析の筆を入れ、大衆文学を日本の文学的伝統の中に正当に位置づけた力作。巻末に現在までの大衆文学文献を付す。

尾崎秀樹

尾崎 秀樹(おざき ほつき、1928年(昭和3年)11月29日 - 1999年(平成11年)9月21日)は、日本の文芸評論家。ゾルゲ事件の研究や、大衆文学評論に尽くした。 ゾルゲ事件の尾崎秀実は異母兄。同母妹の田才秀季子(ほすえこ)は、チェコ文学者田才益夫の妻。妻の尾崎恵子は執筆のアシスタントでもあり、秀樹との共著が二冊ある。歴史学者・政治学者の今井清一は義理の甥(秀実の娘の夫)。 == 経歴 == === 生い立ち === 台湾台北市に尾崎秀真と、愛人の吉田きみとの子として生まれ、母の私生児として育つ。1933年に秀真の本妻が死去し、母が秀真の妻となり、秀樹も尾崎家に入籍する。