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料理通異聞

松井今朝子

天明二年。江戸は大地震に見舞われた。まだ騒然とした空気が残る中、料理屋の跡取り善四郎は御金御用商・水野家で、料理に関係のない奉公生活を続けている。家人たちの様子から、善四郎はうっすらと自らの出生の秘密を感じ取っていた。困っている者を見ると放っておけなくなる性分から関わった貧乏旗本の娘・千満との初恋は実らず、傷心を抱えながら赴いた評判の料理屋で偶然身分の高そうな若い侍と知り合う。これが姫路藩主の次男、後の酒井抱一との出会いであったー。亀田鵬斎、大田南畝、酒井抱一、谷文晁ーそうそうたる時代の寵児たちとの華やかな交遊、そして、想像をかき立てられる江戸料理の数々-相次ぐ天災と混乱の時代に、料理への情熱と突出した才覚で、一料理屋を将軍家のお成りを仰ぐまでにした男の一代記。

松井今朝子

松井 今朝子(まつい けさこ、1953年9月28日 - )は、日本の脚本家、演出家、評論家、直木賞作家。 == 経歴 == 1953年、京都・祇園にある料亭の娘として生まれる。聖母学院中学高等学校卒、早稲田大学第一文学部演劇学科卒、同大学大学院文学研究科演劇学修士課程修了後、松竹株式会社に入社、歌舞伎の企画・制作に携わる。松竹を退職後フリーとなり、武智鉄二に師事して、歌舞伎の脚色・演出・評論などを手がけるようになる。 1997年、『東洲しゃらくさし』で小説家としてデビュー。同年に、『仲蔵狂乱』で第8回時代小説大賞受賞。この作品は、2000年に市川團十郎、新之助の出演でTV化された。1999年、『幕末あどれさん』で第20回吉川英治文学新人賞候補。