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われもまた天に

古井 由吉

インフルエンザの流行下、幾度目かの入院。ホールの雛飾りに節句の頃におこった厄災の記憶が去来する(『雛の春』)。改元の初夏。悪天候と疫病にまつわる明の医学者の教え、若かりし日に山で危ない道を渡ったことが甦る(『われもまた天に』)。梅雨さなかに届いた次兄の訃報。自身もまた入院の身となり、幼い日の敗戦の記憶、亡き母と父が浮かぶ(『雨あがりの出立』)。台風の被害が伝えられるなか、術後の三十年前と同様に並木路をめぐった数日後、またも病院のベッドにいた(『遺稿』)。現代日本文学をはるかに照らす作家の最後の小説集。

古井 由吉

古井 由吉(ふるい よしきち、1937年11月19日 - 2020年2月18日)は、日本の小説家、ドイツ文学者。いわゆる「内向の世代」の代表的作家と言われている。代表作は『杳子』、『聖』『栖』『親』の三部作、『槿』、『仮往生伝試文』、『白髪の唄』など。精神の深部に分け入る描写に特徴があり、特に既成の日本語文脈を破る独自な文体を試みている。 == 来歴・人物 == 東京府東京市出身。港区立白金小学校から同高松中学校を経て、1953年4月、獨協高校に入学。隣のクラスに美濃部強次(古今亭志ん朝)がいた。同年9月、都立日比谷高校に転校。
誕生(1937-11-19) 1937年11月19日 日本・東京都
死没(2020-02-18) 2020年2月18日(82歳没)
職業小説家
言語日本語
国籍日本
教育文学修士
最終学歴東京大学大学院ドイツ文学研究科修士課程修了
活動期間1968年 - 2020年
ジャンル小説・随筆
主題非社会的な場における男女の恋愛生と死、過去と現在、男と女の狭間古典や説話
文学活動内向の世代
代表作『杳子』(1970年)『栖』(1979年)『槿』(1983年)『仮往生伝
主な受賞歴芥川龍之介賞(1971年)日本文学大賞(1980年)谷崎潤一郎賞(198
デビュー作『木曜日に』(1968年)