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熱源

川越宗一

降りかかる理不尽は「文明」を名乗っていた。 樺太アイヌの闘いと冒険を描く前代未聞の傑作! 樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。 開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。 一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。 ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。 日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。 文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。 金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。

川越宗一

川越 宗一(かわごえ そういち、1978年9月13日 - )は、日本の小説家。 == 経歴・人物 == 鹿児島県生まれ、大阪府出身。桃山学院高校を経て、龍谷大学文学部史学科中退。バンド活動を経て株式会社ニッセンにて会社員として勤めるかたわら、若桜木虔の小説添削講座を受講。 2018年に『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞して作家デビュー。2019年、樺太アイヌを描いた『熱源』で第9回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。2020年には同作品で第22回大藪春彦賞候補、第162回直木三十五賞(直木賞)受賞。 == 作品リスト == === 単行本 === 『天地に燦たり』(文藝春秋、2018年7月 / 文春文庫、2020年6月) 『熱源』(文藝春秋、2019年8月) === 雑誌掲載作品 === 小説「天地に燦(さん)たり」(抄) - 『オール讀物』2018年6月号 「海神の子」 - 『オール讀物』2018年12月号 後に『時代小説ザ・ベスト 2019』(日本文藝家協会編、集英社、2019年6月)に収録された。