飛族
村田喜代子
この島にいるのは、ふたりの老女だけ 朝鮮との国境近くの島でふたりの老女が暮らす。 九二歳と八八歳。 厳しい海辺暮らしとシンプルに生きようとする姿! 傑作長編小説。 「わしは生まれて九十年がとこ、この島に住んで、 今が一番悩みもねえで、安気な暮らしじゃ。 おまえは妙な気遣いばせんで、 さっさと水曜の朝に船で去んでしまえ」 ——かつて漁業で栄えた養生島に、 女二人だけで暮らしている。 母親のイオさんは、九十二歳。 海女友達のソメ子さんも、八十八歳。 六十五歳のウミ子が、ふたりを見ている。