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由煕

李良枝

在日朝鮮人として生れた著者の、37歳で夭逝した魂の記録。差別と偏見の苦しい青春時代を越えて、生国日本と母国韓国との狭間に言葉を通してのアイデンティティを探し求めてひたすらに生きた短かい一生の鮮烈な作品群。芥川賞受賞の「由煕」、そして全作品を象徴するかのような処女作「ナビ・タリョン」(嘆きの蝶)、「かずきめ」「あにごぜ」を収録、人生の真実を表現。

李良枝

李 良枝(イ・ヤンジ、이양지、1955年(昭和30年)3月15日 - 1992年(平成4年)5月22日)は、在日韓国人二世の小説家。帰化後の本名は田中 淑枝。 == 生涯 == 山梨県南都留郡西桂町生まれ。小学生のときに両親が日本国籍を取得したので、同時に彼女も国籍は日本となった。山梨県富士吉田市下吉田の山梨県立吉田高等学校から1973年(昭和48年)に京都府立鴨沂高等学校に編入する。1975年(昭和50年)に早稲田大学社会科学部に入学するが、1学期で中退する。 1980年(昭和55年)5月にははじめて大韓民国を訪れ、以後は韓国への往来を繰り返し、巫俗舞踊(ムソク)や伽耶琴(カヤグム)、語り歌(パンソリ)などの影響を受ける。1982年(昭和57年)にはソウル大学校国語国文学科へ入学し、留学中に書き上げた「ナビ・タリョン(나비타령)」を『群像』に発表し、第88回芥川賞候補となる。